はじまりのりねん

こつこつ余所見話

ここでちょっと脱線した話をひとつ。4年前、夫が転職をしました。夫には単身赴任をしてもらいながら一年間よく考え末、私は働いていた手芸店を辞め、地元から遠く離れた夫のもとへついていく決心をしました。子育ての環境と心の準備を整えてからの引っ越しでした。

引っ越してから息子が新しい環境に慣れるのを待つ間、私は一人ソーイングをしながらこつこつぽけっとの発信も始めました。でもだんだんとその時間は減り、2025年はまったくミシンを触りませんでした。自分でミシンを買って以来こんなに縫わなかったのは初めて。このブログもひとつ前の記事が約一年半ぶりの更新でした。

なぜソーイングから離れてしまったか。引っ越した先で、私には新しい趣味ができました。オンライン対戦のゲームです。それまではゲームに全く興味がなかったのですが、息子に頼まれて触ってみたのがきっかけで楽しさに目覚めてハマりました。

自分と向き合いこつこつ楽しみを見出していくソーイングより、作り込まれた楽しみを享受するそれは、手っ取り早く満足を得られる刺激的な娯楽でした。何より、ゲームのキャラクターの向こうに実際にそれを動かしている人がいて、同じ時間に同じゲームをして誰かと繋がっている感じがする。それは、家族以外見ず知らずの土地にきた自分にとって心の拠り所になっていきました。

ひとりの時間はもちろん、家族で遊ぶことも、SNSを始めてからはそこで繋がった人と遊ぶこともありました。そうして出会いが増え、好きな配信者さんができたり、動画の編集をして投稿するようになったりして、約一年半自分の時間はゲーム一色の生活を送っていました。

この間ゲームは、私にとって人とつながり自分を表現する手段。日々の寂しさや忙しなさを紛らわすために、そして何より足踏みしてしまったソーイングへの気持ちに蓋をするために必要だったように思います。

そこからどうしてまたソーイングに向き合うようになったか。

簡単に言うと、もともとの私はゲームに向いてなかったからです。大好きだけど、得意ではなかった。広い視野、素早い判断と処理能力、臨機応変さ。そこそこ時間をかけたのでまぁまぁ上達したのですが、次第に目標は高くなり簡単には越えられないものになっていきました。趣味とはいえ、得意じゃないことを頑張るってちょっと苦しい。それがある大会を参観したときにはっきりと分かりました。自分よりはるかに強い人たち。自分よりプレー時間が少なくてずっと強い人もいました。得意なことで輝く人たちを見て、自分が時間をかけるべき場所はここじゃないと感じました。

そう思えた時点で、私の寂しさはすでに癒されていたのかもしれません。前に進むときでした。

私は人生の節目にいつもバッグを縫いたくなる癖があるようで、たまたまこのときも1年ぶりにミシンを出して、前日にバッグを縫いあげ、それを持って新幹線に乗り会場までやって来ていました。
年明けのまだ寒い時期。大切にしまい込んでいたウールの刺繍の生地で、ポンポンをつけられるタブもつけて、最後まで持ち手の長さに悩みながら作ったバッグ。

帰り道、これを持っているときが一番自分らしくいられるときだという感覚を、久しぶりに噛みしめていました。ここにかけた時間も無駄じゃなかった。ゲームを通して出会えた人たちがいた。学びもたくさんありました。

新しい生活は日常になり、いつの間にか人混みにも酔わなくなっていました。知らない路線でもなんとなく乗り換えてどこへでも行けるようになりました。もうどこにいても何をしていても(していなくても)きっと大丈夫。

何かを紛らわすためじゃなくて、今度こそ自分を幸せにするために。またこつこつやっていこう、そう思えたのでした。今はソーイングを楽しみながら、ゲームもときどきやっています。趣味が増えましたね。

こつこつぽけっともこの文章も、今のところまだまだ自分のためのもの。それでもこつこつ続けた先で、この喜びを増やしていけたらいいな。

こつこつソーイングをやるのは、なんだかマラソンみたいだなと思います。ソーイングライフマラソン。ひとたび走りだせば、素敵な布も型紙も本も作り方もたくさんあります。こだわりたい、とにかく簡単がいい、やりながら自分に合ったスタイルも見つかっていきます。失敗もあります。それは縫って縫って思うように作れるようになってからも。

私は私で走りながら、一緒に楽しむ仲間がほしい。手芸店で働いていたときの、周りの人とあーだこーだ言いながら布を眺め、作品やソーイングのことを考えていた時間は私の人生の宝物です。いつかきっと、ここでもそんな仲間に出会える。そう信じています。